2016年12月23日金曜日

先ず正弦定理を試みるべき問題の解答

これは、ここをクリックした先のページの問題の解答です。

【問1】 
上の三角形において、図の角度の条件が成り立つD点の位置座標を求めよ。
ただし、点A,B,Cの位置座標を、A(0,0)と、B (1,0)と、C(0,√3)とする。

(解答方針)
 ベストな解答方針は、余弦定理で解けそうな問題があっても、先ずは正弦定理(又は円周角の定理)を使って問題を解くよう試みてください。
 この方針は、高校2年になってベクトル方程式を学んだ後でも変わりません。問題解答のベストな方針は、ベクトル方程式で解けそうな問題があっても、先ずは正弦定理(又は円周角の定理)を使って問題を解くよう試みてください。
 更に言うと、大学入試の段階に至って、ピタゴラスの定理を駆使して解けそうな問題があっても、先ずは正弦定理(又は円周角の定理)を使って問題を解くよう試みてください。
 正弦定理(又は円周角の定理)は、それだけ優れた画期的手法だからです。

 また、この問題の様に、
①三角形の頂点の角度θと
②その頂点に対向する辺の長さaが与えられている場合は、
直ぐに、正弦定理を使って、
③その三角形に外接する円の半径Rが、
R=a/(2sinθ)
で求められ、
④その円の中心位置も直ぐに求められる
という事を連想するように発想して下さい。
すなわち、頂角θと対向辺aが分かっている三角形毎に下図の外接円を想像するようにして下さい。
そして、この図を想像したら、次は、この図の円の中心座標を求めようと考えるように、心を整えておいて下さい。  

【第1の解答の試み】
 上に書いたベストな解答方針が優れていることを示すために、あえて、このベストな解答方針に逆らって、正弦定理を考えずに、先ず余弦定理で解くことを考えてみます。
 先ず、一番ダメな解答の試みを書きます。この試みは途中で解答を断念する道草を食う例ですので、解答にもならないことに付き合いたくない人は、この第1の解答の試みの説明をスキップして次の解答から読み始めてください。

(余弦定理を使って問題の条件を記述する方程式を書く)
先ず、以下の座標軸を考える。
この図の三角形DBCについて120°の角BDCに関する余弦定理の方程式を作成する。
この式を展開する。
これで、ようやく、余弦定理に角BDCが120°である条件を入れた方程式が作れた。
しかし、この方程式はどうしようもなく複雑で、とても使いこなせそうにありません。
そのため、これ以上の、この方針による解答の試みは断念することにします。
(解答を断念)

【第2の解答】
 次も、未だ、ベストな解答方針の正弦定理を使うことに逆らいます。
 第2の解答では、ピタゴラスの定理を駆使して問題を解くために、問題の形を変えて、解き易くする工夫をします。
この図形を回転させて、また、相似な図形にして、下図のように線分ADを水平方向に向けた図形で考えます。
この図形は、元の図形に相似な図形であり、ADの長さを1にした図形です。
以下で、この図の三角形OBCの角Oが直角になる条件の方程式1と、三角形OBCが元の図形ABCに相似になる辺の条件の方程式2を作って、方程式を解きます。

先ず式1を変形します。
次に、式2を変形します。
式3を以下の式3’に変形して、それを式4に代入して解きます。
次に、この方程式を解きますが、
方程式の1つの解が得られるだけで良く、
簡単な解を推測によって見つけます。
既に、上の式でも、s=1を上の式に代入して式が成り立つので、これが解であることがわかります。
この解を以下のように図に書き込みます。
更に座標にかかわる詳しい寸法を計算します。
こうして得られたD点の座標を、相似変換することで、元の問題の図形のD点の座標を計算します。
(第2の解答おわり)

以上で、苦労して何とか答えを得ることができましたが、この計算はベストな解答方針ではありませんでした。
以下では、ベストな解答方針である、「先ず、正弦定理(又は円周角の定理)を使って問題が解けないかを考える」に従って問題を解きます。

【ベストな解答(第3の解答)】
三角形DBCの角Dが120°であることを正弦定理であらわした式を考えます。そうすると、三角形の外接円の半径が上式で求められます。
円周角の定理を使ってこの外接円を詳しく調べます。
下図のように、外接円に内接する正三角形ECBを考えます。
円周角の定理を使うと、角BDEと角BCEは60°で等しく、角CDEと角CBEは60°で等しい。
また、外接円の中心Mの位置は上図で示す位置にあることが分かります。
この図から、D点の位置座標を計算する方程式を作って計算します。
この方程式の解は、以下のようになります。
(解答おわり)

以上のように、正弦定理(又は円周角の定理)を使うと問題が簡単に解けました。

このことから、
ベストな解答方針は、余弦定理で解けそうな問題があっても、先ずは正弦定理(又は円周角の定理)を使って問題を解くよう試みることであることが分かります。

【拡張円周角の定理を思い出す】
拡張円周角の定理によって、三角形の各角度が外接円の点のまわりの角度に反映されることを思い出しましょう。
 それを思い出して、点Dを円周角上の点であるとして、以下の図のように、点Dを円周上に持つ円Mと、その円に内接する三角形CBEを発想します。
 この図の関係から、中心Mからの半径Rの円Mと、直線AEの交点Dを計算する方程式を立てることで点Dの座標を計算することができることが分かります。
その方程式は、上の回答の様に計算します。

 この解答方針は、高校2年で学ぶベクトル方程式に対しても、同様に通用します。高校2年のベクトル方程式で解けそうな問題があっても、先ずは正弦定理(又は円周角の定理)を使って問題を解くよう試みてください。

 なお、この問題は、余弦定理等を使って解くことは困難ですが、複素数平面を使うと解けます。
複素数平面を使う解き方は、ここをクリックした先のページにあります。

ベクトルの回転変換の公式を使った解答(第4の解答)】
  第4の解答は、正弦定理や円周角の定理で解ける問題はベクトル計算で解くのが難しいというベクトル計算の欠点を、各ベクトルに、それを90°回転させたベクトルを組み合わせることで補って、ベクトル計算でも問題を解けるようにします。
先ず、D点を位置ベクトルZであらわします。また、ベクトルZを左回りに90度回転したベクトルZを使います。
ベクトルの回転変換の公式を使って、未知数sとtを使った以下の方程式11と式12を作ります。
(この方程式11と12には円周角の定理の持つ本質的な情報が含まれています)
式11と12を式15と式16に変形した。
以下のようにベクトルZを消去してベクトルZを求めます。
 この式17と式18を式16に代入して、ベクトル方程式19を作り、未知数sとtを求める。
式20と21を更に変形する。

t=0の場合は不適。
t≠0の場合を計算する。
以上で得たsとtを式17に代入して位置ベクトルZの座標を計算する。
(解答おわり)

【第5の解答】
 第5の解答は、正弦定理や円周角の定理で解ける問題はベクトル計算で解くのが難しいというベクトル計算の欠点を、円周角の定理をあらわす式(正弦定理で使う外接円)を、ベクトル計算の外から導入することで補って、ベクトルの問題を解けるようにします。
円周角の定理から、上図の様に、点Kを中心にした円が点Dを通り、点Gを中心にした円が点Dを通ります。
この円周角の定理(正弦定理)の結論から、ベクトルADの座標(x,y)が満足する方程式を書きます。
式3と式4の方程式が作れました。
この方程式を以下の様に計算して解きます。
この2つの解のうち、x=0は不適です。
残りの解により、解を計算します。
(解答おわり)

(補足)
 第5の解答では、円周角の定理(正弦定理の外接円)に基づいた方程式1と2(それを表した式3と4)を導入して問題を解いたので、ベストな解答である第3の解答と同じく問題を易しく解ける同質な解答ができました。

 第5の解答で作った方程式1と2は、円周角の定理(正弦定理)に基づいて作成した方程式であって、第1の解答の試みにおいて作った余弦定理の方程式とは根本的に異なります。
 余弦定理によっては直接には円周角の定理をあらわすことはできません。第1の解答の試みでは円周角の定理(正弦定理の外接円)をあらわす方程式を作れなかったので、解答がとても難しくなりました。
 
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